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青森地方裁判所 昭和46年(行ウ)13号 判決

原告 佐藤良吉 ほか一三二名

被告 青森営林局長 ほか三名

訴訟代理人 宮村素之 伊藤俊平 寺田明 哘崎勝四郎 ほか一一名

主文

一  被告青森営林局長が、昭和四六年八月七日付で別紙当事者目録記載の原告番号1番ないし11番の原告らに対してなした各懲戒処分(別表(一)の処分内容欄記載のとおり)は、いずれもこれを取消す。

二  被告むつ営林署長が、前同日付で原告番号12番ないし96番いずれもこれを取消す。

三  被告中里営林署長が、前同日付で原告番号97番ないし114番の原告らに対してなした同原告らを減給するとの各懲戒処分は、いずれもこれを取消す。

四  被告脇野沢営林署長が、前同日付で原告番号115番ないし133番の原告らに対してなした同人らを戒告するとの各懲戒処分は、

五  訴訟費用は被告らの負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

主文と同旨。

二  請求の趣旨に対する被告らの答弁

1  原告らの請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告らの負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  原告番号1番ないし11番の原告佐藤良吉ら一一名(以下、原告佐藤ら一一名という。)は、任命権者である被告青森営林局長(以下、被告局長という。)に採用され、別表(一)の所属欄記載のとおり林野庁の各地方支分部局に勤務していたものである。

原告番号12番ないし96番の原告赤井明男ら八五名(以下、原告赤井ら八五名という。)は、任命権者である被告むつ営林署長(以下、むつ署長という。)に採用され、いずれもむつ営林署に勤務し国有林野事業に従事していたものである。

原告番号97番ないし114番の原告青山兼弘ら一八名(以下、原告青山ら一八名という。)は、任命権者である被告中里営林署長(以下、中里署長という。)に採用され、いずれも中里営林署に勤務し国有林野事業に従事していたものである。

原告番号115番ないし133番の原告奥野義美ら一九名(以下、原告奥野ら一九名という。)は、任命権者である被告脇野沢営林署長(以下、被告脇野沢営林署長という。)に採用され、いずれも脇野沢営林署に勤務し国有林野事業に従事していたものである。

2  昭和四六年八月七日、被告局長は原告佐藤ら一一名に対し別表(一)の処分内容欄記載のとおり、被告むつ署長は原告赤井ら八五名に対し及び被告中里署長は原告青山ら一八名に対しそれぞれ「一か月間処分当日における主たる職種の格付賃金に標準作業日数を乗じた額の一〇分の一を減給する。」旨の、並びに被告脇野沢署長は原告奥野ら一九名に対しそれぞれ「戒告する。」旨の各懲戒処分をした。

3  右各懲戒処分(以下、本件懲戒処分ともいう。)はいずれも正当な理由なくしてなされた違法な処分である。

よつて、その取消を求める。

二  請求原因に対する被告らの認否

1  第1項は認める。ただし、原告番号 1番ないし9番の原告らは後記本件争議行為当時在籍専従休職中であつた。

2  第2項は認める。

3  第3項は争う。

三  被告らの主張

1  (原告らの争議行為及び懲戒処分)

(一) 原告佐藤良吉(原告番号1番)は、青森営林局経営部計画課所属の農林技官であり、後記本件争議行為当時全林野労働組合(以下、全林野という。)青森地方本部(以下、青森地本という。)の専従副執行委員長であつた。同原告は、昭和四六年四月二三日、むつ営林署分会外六分会において実施された「全員常用化、常勤制確立闘争」並びに、同年四月三〇日に中里営林署分会外一分会及び同年五月二〇日に脇野沢営林署分会外一分会においてそれぞれ実施された「大幅賃上げ闘争」の各ストライキ(以下、本件ストライキ又は本件争議行為という。)に関し、昭和四六年三月一日、二日の両日、全林野第五〇回中央委員会の構成員として、常勤制確立及び全員常用化要求のため半日ストライキを行う旨及び大幅賃上げ要求のため半日から一日のストライキを行う旨の各ストライキ計画の企画謀議に参画し、また、同年三月八日、四月一六日及び四月二六日、青森地本分会代表者会議を開催し、全林野中央本部の方針に従い本件ストライキを実施する旨のストライキ計画の企画謀議に参画した。

原告松谷泰孝(原告番号2番)は、青森営林署所属の農林事務官であり、本件争議行為当時青森地本の書記長であつた。同原告は、原告佐藤良吉と同様前記全林野中央委員会及び青森地本分会代表者会議における本件ストライキ計画の企画謀議に参画したほか、同年四月二三日、蟹田営林署分会におけるストライキを自ら指導し実施せしめた。

原告岡本富夫(原告番号3番)は、大間営林署所属の農林事務官であり、本件争議行為当時全林野中央本部執行委員及び青森地本財政局長であつた。同原告は、前記青森地本分会代表者会議における本件ストライキ計画の企画謀議に参画したほか、同年四月二三日のむつ営林署分会におけるストライキ及び同月三〇日の中里営林署分会におけるストライキを率先して指導し実施せしめた。

原告吾妻実(原告番号4番)は、青森営林局経営部計画課所属の農林技官であり、本件争議行為当時青森地本の執行委員であつた。同原告は前記全林野中央委員会及び青森地本分会代表者会議における各ストライキ計画の企画謀議に参画したほか、同年四月二三日の弘前営林署分会におけるストライキ及び同年五月二〇日の脇野沢分会におけるストライキを自ら指導し実施せしめた。

原告佐藤敏雄(原告番号5番)は、黒石営林署所属の農林技官であり、本件争議行為当時青森地本の執行委員であつた。同原告は前記青森地本分会代表者会議における本件ストライキ計画の企画謀議に参画し、その指導に任じた。

原告岩崎公也(原告番号6番)は、遠野営林署所属の農林技官であり、本件争議行為当時青森地本の執行委員であつた。同原告は前記青森地本分会代表者会議における本件ストライキ計画の企画謀議に参画したほか、同年四月二三日の川尻営林署分会のストライキ、同月三〇日の中里営林署分会におけるストライキ及び同年五月二〇日の脇野沢営林署分会におけるストライキを自ら指導し実施せしめた。

原告山岸芳美(原告番号7番)は宮古営林署所属の常用作業員であり、前記青森地本分会代表者会議における本件ストライキ計画の企画謀議に参画したほか、同年四月二三日の市浦営林署分会のストライキ、同月三〇日の古川営林署分会のストライキ及び同年五月二〇日の岩泉営林署分会のストライキを自ら指導し実施せしめた。

原告小笠原良男(原告番号8番)は、白石営林署所属の農林事務官であり、本件争議行為当時青森地本の執行委員であつた。同原告は、前記青森地本分会代表者会議における本件ストライキ計画の企画謀議に参画したほか、同年四月二三日の白石営林署分会のストライキ及び同月三〇日の古川営林署分会のストライキ及びジグザグデモ行進などを先頭に立つて指導し実施せしめた。

原告木村養七(原告番号9番)は、大槌営林署所属の農林技官であり、本件争議行為当時青森地本の執行委員であつた。同原告は、前記青森地本分会代表者会議における本件ストライキ計画の企画謀議に参画したほか、同年四月二三日の雫石営林署分会のストライキ及び同年五月二〇日の岩泉営林署分会のストライキを自ら指導し実施せしめた。

原告佐々木昭男(原告番号10番)は青森運輸営林署所属の農林事務官であり、本件争議行為当時青森地本の執行委員であつた。同原告は前記青森地本分会代表者会議における本件ストライキ計画の企画謀議に参画し、本件ストライキを実施せしめた。

原告仲谷正(原告番号11番)は、青森営林局作業課(現在は宮古営林署)所属の農林事務官であり、本件争議行為当時青森地本の執行委員であつた。同原告は前記青森地本分会代表者会議における本件ストライキ計画の企画謀議に参画し、本件ストライキを実施せしめた。

右原告佐藤ら一一名の各行為は、これによつて義務の遂行に重大な支障を与えたものであつて、いずれも公共企業体等労働関係法(以下、公労法という。)一七条一項によつて禁止された争議行為に該当し、かつ国家公務員法(以下、国公法という。)九九条に違反するので、被告局長は同法八二条一、三号に基づき前記各懲戒処分をした。

(二) 原告赤井ら八五名は、いずれもむつ営林署に所属し、本件争議行為当時におけるその部署雇用区分、職種及び作業内容は別表(二)記載のとおりである。同原告らは、同年四月二三日、原告岡本富夫の指導のもとに、午前七時ころから集会を開き、引続き始業時から無許可の集会に参加し、被告むつ署長の発した再三にわたる職場復帰命令等を無視し、右集会を午前一〇時五八分まで継続した。その後同原告らは、各作業現場に復帰するまでそれぞれ四時間にわたつて職務を放棄し、丸太の生産、苗木の育成植付け及び林道事業等各種業務を広範にわたり阻害した。

原告青山兼弘ら一八名は、いずれも中里営林署に所属し、本件争議行為当時におけるその部署、雇用区分、職種及び作業内容は別表(三)記載のとおりである。同原告らは、同年四月三〇日、原告岡本富夫の指導のもとに、始業時から無許可の集会に参加し、被告中里署長の発した再三にわたる職場復帰命令等を無視し、右集会を午前一一時四五分まで継続した。その後同原告らは、各作業現場に復帰するまでそれぞれ四時間にわたつて職務を放棄し、業務を阻害した。

原告奥野義美ら一九名は、いずれも脇野沢営林署に勤務し、本件争議行為当時におけるその部署、雇用区分、職種及び作業内容は別表(四)記載のとおりである。同原告らは、同年五月二〇日、原告吾妻実及び同岩崎公也の指導のもとに、始業時から無許可の集会に参加し、被告脇野沢営林署長の発した再三にわたる職場復帰命令等を無視し、右集会を午前九時四三分まで継続した。その後各作業現場に復帰するまで、原告番号117番、120番ないし123番及び131番の原告らは二時間四六分、同115番、116番、118番、119番、124番ないし130番、132番及び133番の原告らは二時間五九分にわたつてそれぞれ職務を放棄し、苗木の植付け及び造林木の生育上支障となつている雑木等の伐倒業務を阻害した。

右各原告らの行為はそれぞれ公労法一七条一項並びに国公法九六条一項、九八条一項、九九条及び一〇一条一項に違反するので、同法八二条各号に基づき、被告むつ署長は原告赤井ら八五名に対し、被告中里署長は原告青山ら一八名に対し及び被告脇野沢署長は原告奥野ら一九名に対し、いずれも同年八月七日付で前記各懲戒処分をした。

2  (本件争議行為に至る経過)

(一) 国有林野事業に従事する作業員の処遇

国有林野事業に従事する職員のうち作業員とは、行政機関の職員の定員に関する法律(定員法)及びこれに基づく行政機関職員定員令に定められた職員(いわゆる定員内職員)以外の職員(いわゆる定員外職員)をさし、国公法上一般職の国家公務員とされているがその処遇については法的規整が不明確かつ不統一であつたので、林野庁は、昭和二六年三月制定の営林局署労務者処遇規定をもつて雇用区分その他の労働条件全般について全国統一的な基準を設定し、さらに昭和二八年公労法が国有林野事業に適用されるようになつた後は全林野との間で作業員の労働条件について団体交渉により多くの協約、覚書等を締結し、近代的合理的な労働条件決定の慣行を確立して来た。

作業員の雇用形態については、昭和四四年四月締結の「定員外職員の雇用区分、雇用基準および試用期間に関する覚書」により雇用区分としては、常用作業員、定期作業員及び臨時作業員の三種が区別され、常用作業員は形式的には有期の雇用であるが、必ず更新され、実質的には期間の定めのない雇用として安定した雇用形態にあるほか、定期作業員は毎年一定期間の雇用であるが、期間満了により退職しても事業遂行上事情の変更がないかぎり翌年以降も優先的反覆的に雇用されている。

賃金については、国有林野事業従事の職員には一般職の職員の給与に関する法律の適用はなく、国の経営する企業に勤務する職員の給与等に関する特例法が適用され、これにより国家公務員及び民間労働者の賃金その他の事情を考慮して定められ、手続的には公労法八条の団体交渉によつて決定されることになつている。林野庁は全林野との間で、昭和三六年九月「国有林野事業に従事する作業員の賃金に関する労働協約」を締結し、以後これに基づいて処置してきている。また、右協約その他の協約により期末手当、扶養家族手当等の諸手当が定められているほか、定期作業員の雇用中断期間中にはその資格に応じて国家公務員等退職手当法または失業保険法による退職手当または失業保険金が支払われている。

また、休暇等については、昭和四四年四月に締結された「国有林野事業の作業員の週休日および作業休日に関する覚書」により、原則として毎日曜日が週休日とされているほか、一か月につき二日の作業休日が設けられ、有給休暇も常用作業員については労働基準法を上まわる日数が定められるほか、定期作業員についても同法の基準によれば年次有給休暇は与える必要がないにもかかわらず、雇用期間内に一一日の有給休暇が定められている。そのほか、作業員就業規則により各種の特別休暇及び欠勤の承認の制度が設けられ、それぞれ賃金または休業手当等が支給される。

(二) 雇用安定及び処遇改善等についての労使交渉

昭和四一年三月二五日、林野庁は作業員の雇用安定及び処遇改善を求める全林野との間で団体交渉を持ち、基本姿勢として直営直用を原則とし、これを積極的に拡大して雇用の安定を図る方向で検討し、雇用の通年化について努力する旨の林野庁の方針を確認し(いわゆる三・二五確認。)、同年六月三〇日、さらに、基幹要員の臨時的雇用制度を抜本的に改善するという方向で雇用の安定を図り、さしあたりの措置として生産事業の通年化による通年雇用の実現、事業実施期間の拡大あるいは各種事業の組合せによる雇用期間の延長などを考慮中である旨を確認した(いわゆる六・三〇確認。)。

林野庁は右二確認以後、基幹要員の臨時的雇用制度の改善のため雇用制度問題検討会を設置して検討を重ね、昭和四三年一一月九日、全林野に対し、現行の常用作業員定期作業員のなかから選考により年間を通じて就労する通年雇用と、一年のうち一定期間就労する有期常用の制度を設け、これら新常用作業員について国公法上の常勤職員とすることの可能性などにつき検討中であることを説明し、また、林野庁としては臨時的雇用制度の改善を昭和四五年度には実施しうるよう関係省庁と折衝したがその了解を得ることができなかつたので、昭和四五年二月二四日、全林野に対し昭和四五年度実施は見送らざるを得ない旨説明した。その後、林野庁は昭和四六年度実施を図るべく努力し、同年七月、全林野に対し、関係省庁の了解を得られることを前提として、従来の雇用区分を改めて基幹作業員と臨時作業員に区分し、基幹作業員については、資格要件を定めて現行の常用、定期作業員から選考し、国公法上の常勤職員として取扱うことなどについて非公式に提示した(いわゆる七月提案。)。しかし、全林野は右提案につき、六・三〇確認にいう基幹作業員とは現行の常用、定期作業員の全員をさし、これを選考し資格制限を設けることは新たな差別であると主張した。これに対し林野庁は、現行の常用、定期作業員の全員を基幹作業員とすることはできない旨回答し、昭和四六年度実施のため努力することを約したが、全林野はこれを不満として同年一二月一一日、全国六七の営林署において始業時から約四時間の拠点ストを実施した。その後も、林野庁は昭和四六年二月までに関係各省庁との調整を終えて全林野と本格的な交渉に入るべく努力を続け、他方、同年三月中に衆議院内閣委員会及び農林水産委員会でこの問題が論議され、同年四月一三日、林野庁長官は政府統一見解として基幹作業員を制度的に常勤職員とすることは国家公務員の体系にもかかわる困難な問題であるので慎重に検討する旨答弁し、林野庁はこれに沿つて、全林野と交渉し、今後処遇改善に努力するが、政府部内の折衝や予算措置など困難な、問題が多いのでしばらく猶予して欲しい旨再三理解を求めたが、全林野はこれを不満として、同年四月二三日、全国七二の営林署(むつ営林署を含む。)において約五、三〇〇名の職員が参加して始業時から約四時間にわたつて職務放棄の拠点ストを実施した。

また、昭和四六年度の賃金引上げについての交渉経過は以下のとおりである。全林野は、昭和四五年七月の第二一回定期全国大会において昭和四六年度の賃上げ闘争にさいしては春闘共闘、公労協共闘の一員としてストライキを背景として闘うことを決意し、昭和四六年三月の第五〇回中央委員会において四月下旬から五月上旬及び五月中旬の各山場に半日から一日のストライキを実施することを決定した。全林野はこれを背景として林野庁に対し、月給制職員については月額一万五、三〇〇円、日給制職員については日額一、三〇〇円の賃上げ要求を提出し、合わせて両職員間の格差是正に積極的に取組むべきことを要求した。林野庁はこれに対して、賃上げの要否程度は諸要因を総合検討のうえ決定せざるを得ないため具体的回答は猶予して欲しい、格差是正については、昭和四二年の「一〇確認」の基本姿勢と変らず、右確認以降格差は縮少して来ているなどを回答した。この間、全林野は各地方本部に対してストライキに突入できる態勢を確立せよとの指令を発し、林野庁が四月二七日に示した具体額を不満とし、四月三〇日、かねての計画どおり全国二〇の営林署(中里営林署を含む。)で始業時から四時間の拠点ストを実施した。その後同年五月に入つて、林野庁は格差是正については組合主張を踏まえ、誠意をもつて対処する旨を明らかにしたが、全林野は自主交渉を打切り公労委に調停申請をすると表明し、同月一四日、右申請に及んだ。調停委員会においては、最終的に月給制職員については基準内賃金の八パーセント相当額に二、三〇〇円を加えた額(七、四一三円)、日給制については三三〇円とする旨の解決案が示され、使用者委員はこれを受け入れたが、労働者委員の不賛成で、結局不調に終つた。この間、全林野は五月二〇日の拠点ストを計画し、指令しており、同日、全国二一の営林署(脇野沢営林署を含む。)において約五〇〇名が参加して実施されたが、公労協において同日のストを午前一〇時までとする決定をしたため、全林野もこれを中止する旨の指令を発した。昭和四六年度の賃上げ問題は、その後の公労委の仲裁裁定の提示により解決した。

3  (本件争議行為の影響)

国有林野事業は、国土の保全、水源のかん養、国民の保健休養、自然保護等国有林野の有する公益的機能を確保し、国有林野の存する地域における農林業構造の改善、地域住民の福祉向上のため国有林野の活用を図り、他方、奥地未開発林の開発等によつて林業総生産の増大に努め、国民経済によつて重要な林産物の持続的供給源としてその需給及び価格安定に貢献することなどが要請され、事業の適切な管理運営が強く求められており、業務計画は長期にわたる総合的なものであるとともに末端における最小単位の業務についてまで盛りこんだ詳細なものでなければならないから、一部における業務阻害は全体的な事業の遂行に重大な支障を与え、しかも、その事業は季節的自然的制約が多いため一時的ないし短期の業務の停廃も有機的関連性をもつて連鎖的に他に波及し、回復困難な損害をもたらすものである。

4  (処分の適法性)

(一) 公労法一七条一項は合憲である。

(1) 憲法における労働基本権は、個人の尊厳に最大の価値を認める憲法がこれを支える個人の精神的活動の自由を最大限に保障しているのに対し、個人の精神的活動の充足の前提となる生存権確保の手段として、自己の労働による以外に生計の途を持たない勤労者につき、国家の政策的配慮としてこれに助力を与える意味で保障されたものであつて、天賦自然の人権ではない。したがつて、健康で文化的な最低限度の生活すら維持できない労働条件下の勤労者の労働基本権については、これを制限することは許されないということができるであろうけれども現在の公務員の労働条件はそのような劣悪なものではなく、すでに一定水準が保たれているのであるから、公務員にとつての労働基本権は生活水準の一層の向上を図るための手段であり、資本制社会における経済人としての活動の保障の意味を有する経済的自由権というべきであつて、その保障が絶対不可欠で制約は極めて例外的な場合にしか許されないということはできない。また労働基本権が生存権保障のための手段的権利であることからすれば、勤労者の生存権確保のために他に代るべき手段があればこれを制限することは合理的な必要性に基づくかぎり違憲とすることはできない。

(2) 右のような労働基本権の性質に照らし、労働基本権は絶対的なものではなく、制約のあることは明らかである。憲法の保障する権利、自由といえども、現代の社会的基盤を当然の前提としているのであつて、現代の社会秩序の要請する制約に当然に服するものである。そして、国家公務員の所属する国という組織は、国民全体の福祉、換言すればその基本的人権の維持実現を使命とし、国の処理すべき事務や行うべき事業は、いずれも国民が、右の国の使命又は目的の完遂のため国民の負担において遂行される必要があると判断して国に信託したものであり、国民によつて国民全体の福祉の実現に必要不可欠なものと判断されたものである。そして、それらの事務、事業は国民生活の基盤をなすものとして停廃混乱なく遂行されることが国民によつて期待されている。したがつてそれらの事務、事業の停廃は、右の期待に反し、国民全体の基本的人権の維持実現という「国民全体の共同利益」を損うことになるのである。公務員の職務は右のとおり停廃されることなく遂行されることが要請されているが、このことと公務員が自己の勤務条件に関する利益を擁護するためその職務を拒否することを労働基本権の一つである争議権として保障することとの間には矛盾を避け難い面がある。この場合、前述の労働基本権の経済的及び手段的権利としての性格にかんがみれば、右に述べた矛盾の調整のために労働基本権が制約されることは当然ありうることといわなければならない。

加えて、公共企業体職員を含む公務員の地位、職務及び勤務条件等の特殊性(次段以下に述べる。)からすれば、その労働基本権、なかんずく争議権を一率に制限することも許されると解するべきである。

(3) 国家公務員の勤務関係は、一般の民間労働者が労働条件をめぐつて使用者との間に経済的な利害の対立関係にあるのと異なり、このような対立関係にはなく、つきつめれば主権者たる国民が公務員の使用者であるということができるけれども、国民と公務員との間には利害の対立関係はなく、ただ国民による信託と公務員の奉仕という関係があるのみであつて、公務員は国の組織、制度を通じて、自分自身を含む主権者たる国民全体に奉仕する立場にあるわけである。また、公務員は国の組織、機構を構成する人的要因であつて、公務員の存在なくして国の組織、機構は現実に機能作用を発揮することができず、その意味で公務員はそれ自体が国の機関を構成するものとして、その勤務関係は私的な従属労働関係ではなく、公法上の特別の勤務関係とみるべきである。

したがつて、公務員の地位及び勤務関係を労働法の法理によつて理解することは相当ではない。

(4) 公務員の職務は、国民の負担においてその負託の下に国民全体の福祉のため継続的に非代替的な役務を提供するものであつて、本来利潤追求のためにある民間企業や民間公益事業とは異なつた意義を有し、その停廃は国民全体の共同利益に重大な影響を及ぼすかまたはそのおそれがあるという性質を有する。

これを国有林野事業についてみると、以下のとおりである。

わが国の林野面積は約二、五二八万ヘクタールで国土面積の約六八パーセントを占め、そのうち公有林野等の官行造林地を含む林野庁所管の林野は約七八四万ヘクタールで、わが国林野面積の約三一パーセント、国土面積の約二一パーセントに及んでいる。また、国有林野の森林総蓄積は昭和四六年四月現在約八億三、五〇〇万立方メートルで、わが国森林蓄積の約四四パーセントを占める。わが国の森林全体のなかで国有林野の占める比重は右のとおり甚だ大きいが、さらに、国有林野は全国に分布し、その多くはせき梁山脈地帯に分布して国土保全、水源かん養の重要な役割を果すとともに、その自然景観により国民の保健休養に不可欠の機能を果している。これに対してわが国の森林の約三分の二を占める民有林は多く里山に所在し、その過半が個人所有の私有林として約二五七万戸の林業家によつて所有され、その大部分が一〇ヘクタール以下の零細小規模所有であり、森林の有する公益的機能の維持増進という見地からすれば、民有林野は国有林野に到底及ばないばかりか、その差は単に経営形態の単純な差異にとどまらず、国土保全等国民生活の基盤を維持し、国民経済と福祉向上を目的とする国の基本的施策の推進をその事業内容に本質的に包含している点において民有林野とは比較しえない重要性を有し、国民生活全体の利益と密接な関連性を持つものということができる。

(5) 公務員の勤務条件は、国会の制定した法律及び予算によつて決定され、使用者としての政府は勤務条件の最終的な決定権を有せず、労使関係における当事者としての十分な資格を有しない。かような立場にある政府に対し争議行為による圧力を加えることは、政府の処理しえない事項についてその行為を要求するものであつて、国会において民主的に行なわれるべき公務員の勤務条件の決定過程を歪曲することになりかねないのである。

これを国有林野事業についてみると、その予算は国会の承認を要し、支出には使途の制限があり、決算は会計検査院による検査や国会への報告を要し、利益金の処分や留保の制限がある。また、国有林野事業に従事する職員については公労法によりその労働条件に関し、団体交渉の対象とし、かつ、労働協約を締結することが認められているけれども、その範囲については制限が法定され、国家公務員退職手当法、国家公務員災害補償法、定員法など諸法令による制約を免れないほか、職員の給与の額はその会計年度の予算の中で給与の総額として定められた額を超えてはならないという給与総額制が法定されており、労働協定は予算上又は資金上不可能な資金の支出を内容とする場合には国会の承認を得なければ拘束力を生じないとされているなど、労使の自主決定権は制限されているのである。

(6) 法は、公務員の生存権保障の趣旨から、労働基本権の制約に見合う代償措置として身分、任免、服務、給与その他に関する勤務条件についての周到詳密な規定を設け、さらに中央人事行政機関として準司法機関的性格をもつ人事院を設けている。人事院は、公務員の給与、勤務時間その他の勤務条件について、いわゆる情勢適応の原則により国会及び内閣に対し勧告又は報告を義務づけられている。そして、公務員たる職員は、個別的に又は職員団体を通じて、俸給、給料その他の勤務条件に関し、人事院に対して行政措置要求をし、あるいは不利益処分についての審査請求をする途も開かれている。このように、公務員は、労働基本権に対する制約の代償として、制度上整備された生存権擁護のための関連措置による保障を受けているのである。

これを国有林野事業についてみると、公労法に基づく公共企業体等労働委員会によるあつせん、調停及び仲裁の制度が争議行為禁止の代償措置として機能し、とくに、仲裁裁定は同委員会が第三者機関として公正にこれを行い、当事者双方はこれに服従しなければならず、政府も当該裁定の実施につき努力しなければならないものとされている。公共企業体等労働委員会の発足以来、賃金関係の仲裁裁定は当局において完全に実施し来つており、代償措置としての機能は十分に果されている。

(二) 公労法一七条一項違反の争議行為に対する懲戒処分は適法である。

公務員の懲戒制度は、公務員の地位の特殊性からして公務の執行ないしは公務員に対する国民の信頼を維持することにその目的があり、使用者の利益保護を目的とする私企業の懲戒制度と同一視することはできない。公務員の争議行為は、国の業務の維持の面からする職務秩序に違反するものであるとともに、公務員として課せられた服務義務に違反する側面を有する。また、私企業の場合企業秩序違反が争議行為として行なわれた場合には争議権が保障されている関係上その争議行為が正当性を有するかぎりその行為の故に労働者が企業秩序違反の責を問われることはないが、争議行為が正当性を有しない場合には企業秩序違反の責を負うことを妨げる理由は何もない。公務員の場合は、そもそも争議行為が禁止されており、かつ、公労法は労働組合法八条の適用を排除しているから、全ての争議行為は違法であつて正当性の有無を問う余地がなく、また、争議行為をした公務員につき民事上の責任を問うことは何ら妨げられない。公労法一八条は争議行為をした職員に対する制裁すなわち懲戒処分の一種として解雇を定めているが、もとより懲戒処分の種類が解雇に限定されるのではなく、国公法八二条所定の各種の懲戒処分も懲戒権者の選択に従つてこれをなすことができるのである。

四  被告らの主張に対する原告らの認否

1  被告らの主張第1項中、被告ら主張の日に原告ら(目録番号1番ないし11番)が青森地本分会代表者会議を開催したとの点及び原告らの行為が公労法一七条一項及び国公法九九条その他に違反するとの点はいずれも否認し、被告らが国公法八二条各号に基づいて各懲戒処分をしたとの点は不知であり、その余は認める。

2  同第2項ないし第4項の主張は争う。

五  原告らの主張

1  (本件争議行為に至つた経過)

(一) 国有林野事業の基幹をなす現場各事業の技術的技能的な作業労働に従事している定員外職員のうち、常用作業員及び定期作業員は、国有林野事業に反覆雇用され、現場労働に専業的に従事して、生活を国有林労働に専ら依存している現状にあるが、制度的には臨時雇用であり、とくに定期作業員は一〇年以上反覆継続して雇用されている者が圧倒的多数であるが、失業期間中は退職手当等により最低生活を強いられている。賃金支払形態は定額日給と出来高給であり、きわめて不安定な状態におかれているし、賃金水準はきわめて低く、例えば機械関係要員のように同一労働形態にある者の定員内月給制技能職員との格差は依然として縮少されていない。定員内職員との格差は賃金水準だけでなく、諸手当、年休等の諸権利を含め全般的な差別的処遇が定着している。また、国有林における現場労働は屋外作業が主でしかも人里離れた山間へき地にあり、山旧形態で山林労働に従事する者があるなどの劣悪な作業環境に加え、近年の機械化、合理化による労働強化が一層進められ、依然として労働災害が多発し、とくに死亡、重傷事故が高い率を示してきている。

(二) 全林野労働組合は、結成以来一貫して雇用の安定、賃金引上げ及び差別の撤廃等に向けてとりくんできた。

昭和四一年三月二五日、全林野と林野庁との間で、直営直用を原則とし雇用の安定を図る旨の確認がなされ、さらにこれを具体化する趣旨で、同年六月三〇日、事業実施期間を拡大し、事業の通年化によつて通年雇用を実現し、各種事業の組合せによつて雇用期間を延長するなどの措置を講じて基幹要員の臨時的雇用制度を抜本的に改めていくこと、福利厚生面を拡充し、労働災害防止措置を積極的に推進すること、これらの具体化にあたつては労働組合との十分な協議により円滑に推進することという旨の確認がなされた(いわゆる「二確認」)。しかし、その後常用化された作業員数は八、〇〇〇名にしか及ばず、今日なお二万名に近い定期作業員が不安定雇用のまま放置されている。全林野は二確認に基づいて臨時雇用制度の抜本的改善を林野庁当局に要求し、その改善策の具体的明示を迫つた。林野庁は昭和四三年秋の中央交渉において、基幹要員につき通年雇用とし、常勤性を付与して相応の処遇をするという提案をしたので、全林野は右提案を足がかりとしてその具体的実施内容の明示を求めてきたところ、林野庁は、昭和四四年末に至り翌四五年度実施を図るべく検討する旨回答したが、その後これに反して実施目標を昭和四六年度とし、その内容を四五年七月に説明するとの回答を寄せた。しかし、林野庁は同年末に至つて再び四六年実施の線を反古にしたうえ、「常勤性」自体の実現についてもきわだつた後退姿勢を示した。そこで、全林野は同年一二月一一日、拠点ストを決行した。これに続いて計画された第二波ストライキの直前に、林野庁は、四六年度実施の決意に変りはなく、同年二月末までに関係省庁との折衝を終えたうえ、組合と協議するとの態度を確認したので、全林野は同ストライキを中止した。しかるに、昭和四六年三月に至つても林野庁は関係省庁との折衝についてきわめて消極的かつ不誠実な態度に終始し、その了解を得ることができず、事態は国会で論議されるまでに発展した。全林野は林野庁の右態度に対し、各地本代表者会議を開いて反覆ストライキを決定し、中央交渉、国会での論議状況を参酌しつつ事態の進展に柔軟に対処して行くことを基本として、同年三月二六日の半日ストライキを指令した。この動きに応じて各省庁折衝が活発化し、衆議院農林水産委員会において、政府は同年四月中の初会合において見解を示すことを約し、林野庁長官も四月中旬を目途に結論を得るよう努力する旨表明した。右の状況をうけて、全林野は前記ストライキを四月二三日に延期したが、四月一三日に示された政府の統一見解及びこれに対して全林野がなした提案に対する林野庁の回答はいずれも事態の進展に何ら資するものではなく、制度的改善及びそれまでの処遇改善の基本方向の明示もなされないきわめて不当なものであつた。そこで、全林野はやむをえず四月二三日の半日ストライキを実行せざるをえなかつたものである。

また、昭和四六年度の全林野の賃金引上げ要求額は、月給制職員について月額平均一万五、三〇〇円、日給制職員について日額平均一、三〇〇円というものであり、全林野としては同年の春闘の進め方として、公労協の賃上げが決着したとしても、前記日給制職員の賃金格差縮少のため独自のストライキも決意するという方針であつた。これに対してなされた林野庁の回答額は要求の三分の一にも満たない低額であり、到底納得しうるところではなかつたうえ、全林野との交渉において従来になく頑迷な態度を示した。このため、全林野は前記の常用化、常勤制確立の要求と合わせ、同年四月三〇日の拠点ストを決意し実行した。

しかし、右拠点スト実施後も賃金交渉は硬着状態を続け、公労委における調停に移行するに至つた。全林野はストライキを背景としつつ、格差解消、月給制及び日給制の同時解決の途を求めたが、これに対する回答はなんら得られなかつたので、やむをえず同年五月二〇日のストライキを決行したものである。

2  (本件懲戒処分の違法性)

(一) 公労法一七条一項は憲法二八条に違反し、無効である。

労働基本権は、憲法二五条が宣言する、健康で文化的な生活を営む権利すなわち生存権を労働者の労働生活の場面において具現化するものであり、その本質は、労働者にとつてその生存権を実現するための唯一不二の手段であるばかりか、基本的には市民誰しもが享有しなければならない取引の自由の実質的具現であり、かつ、承服できない条件下では働かないという人間の尊厳にも根ざす根源的自由にほかならない。

右の労働基本権の性質から、これを制約しうるのは、他の同等あるいは優越する基本的人権の侵害のおそれがある場合に限られる。ところが、公労法一七条は規制の対象とされる公共企業体等職員の争議行為を、その担当する業務の如何を問わず一律に、さらにその態様の如何を問わず全面的に、しかも最も強圧的な禁止という抑制で臨むという規定である。しかし、三公社五現業の行う業務は多種多様であり、それがすべてその停廃によつて国民生活全体の利益を害し、国民生活に重大な障害をもたらすおそれを生じるものではなく、むしろ、国有林野事業をはじめ、日本専売公社の専売事業、造幣事業、印刷事業、アルコール専売事業などはその組合や職員の争議行為によつて国民生活に重大な障害をもたらすおそれは全くなく、争議行為を禁止しあるいは禁止以外の制限を加える必要はないというべきである。また、争議行為の態様はさまざまであり、同じ事業、同じ事業場で実施する争議行為であつてもその態様や規模によつて使用者や第三者に対する影響は大きく異なるのであり、常に国民生活に重大な障害をもたらすおそれがあるとは到底いえない。さらに右の業務の性質内容と争議行為の規模態様から国民生活に重大な障害をもたらすおそれがあるとしてこれを規制すべき場合があるとしても、直ちにその争議行為を禁止し、争議権を全面的に剥奪することは基本的人権保障の理念に反するというべきである。

(二) 国有林野事業に従事する労働者に公労法一七条一項を適用することは憲法二八条に違反する。

国有林野の公益性は民有林に比較してより高度ということはできず、争議行為によつて伐採等の人為が加えられないからといつて森林が破壊されるということはその性質上ありえないのであつて、国有林野事業における争議行為が国民生活全体の利益に重大な影響を与えることは考えられない。

すなわち、わが国の国土保全上森林全体の果たす役割はきわめて大きいが、これは森林自体の性格であつて、この意味の公共性は国有林と民有林とに共通であり、とくに国有林について公共性が高いとはいえない。また、森林の蓄積量が現実的意味を有するのは、そのうちの供給可能な量とりわけ実際の供給量であり、国有林の木材供給におけるシエア(市場占有率)は国内総需要量の一二、三パーセントにすぎず、民有林は約三〇パーセントで残り六〇パーセント近くが輸入外材によつて占められている。したがつて、仮に国有林からの木材供給が一時的に停止したとしても、その影響は局部的かつ局地的であるにすぎない。国有林野の国土保全、水源かん養における役割も、保安林の面積からいえば民有林野と相半ばするにすぎないうえ、むしろ伐採その他の森林施業が禁止され、自然のまま地勢を安定させ林地保全をすることがその目的に適するものである。ところが、国有林野事業の場合は逆に保安林の機能を破壊するような管理経営が行なわているのが実情である。さらに、国有林野事業の遂行上における公共性についてみるに、施業計画の編成は各営林局毎、地域施業団毎に行なわれ、民有林と基本的には差異はなく、現に人員、予算、天候等の事情によつて適宜に時期、日程が変更されており、一時的停廃による国民生活上の影響を生ずるということはありえないし、管理事業についても、それはあらゆる事業に付随するものであつて、国有林野事業に特有の問題があるものではない。また国有林野事業における木材生産販売の六〇パーセント以上が木材市場と直接結びつかない立木による生産販売であり、残りの製品生産販売のうち約二〇パーセントが直営とは名ばかりの民間業者に委ねられ、国有林野事業に従事する労働者が直接生産しているのはわずか一五、六パーセントにすぎない。造林事業の季節的制約は林業技術の発達により次第に緩和されているし、植付け、下刈り等の作業も期間や時期に幅があり、一時的停廃の影響はほとんどない。治山事業や林道事業も新設改良工事はごく一部の例外を除いてほとんど民間請負であり、国有林労働者の仕事はきわめて軽微な工事と保修作業に限定されている。

以上のように、国有林野事業に何がしかの公共性があるとしても、その故に国有林労働者の争議権を剥奪するに足りるほどのものではなく、むしろその経営の実態が、独立採算制のもとで単年度収支均衡予算制度を建前とし、経済性、収益性に重点がおかれた生産第一主義的なもので、私的経営と大差がないことからすれば、公務員たる身分を理由に争議権を制限することに合理的な理由はない。

また、定員外の日給制作業員は国公法上の任用、分限、保障に関する規定の適用を受けず雇用、身分が不安定であることはいうまでもなく、前述のとおり処遇に関しても月給制職員に比してはるかに劣悪であり、代償措置としての国公法体系に基づく保障機能を奪われているのであり、自らの団結活動により雇用安定や処遇改善を図つて行くより以外に方法がない。

このような、国有林野事業の業務の実態、日給制職員の地位にてらし、公労法一七条一項を国有林野事業に従事する労働者なかんずく日給制職員の労働条件の維持向上を目的とする争議行為に適用することは違憲である。

(三) 本件争議行為は公労法一七条一項によつて禁止された争議行為にあたらない。

仮に、公労法一七条一項が一般的に違憲ではなく、またこれを国有林野事業従事の日給制職員の争議行為に適用することが違憲でないとしても、同規定は国民生活に重大な障害をもたらすおそれのある争議行為に限つてこれを禁止するものと限定的に解釈されるべきであり、かように解釈することによつてのみ合憲たりうる。

これを本件争議行為についてのみ、前述のとおり本件ストライキは全林野の正当な要求に対して林野庁当局が不誠実な態度でしか応対せず問題の解決に真剣な努力を怠つたためやむをえず決行されたものであつて、その参加者は全林野青森地本本部の執行委員等以外はいずれも現場作業員であり、職場放棄の時間も三時間ないし四時間程度の短時間であつて、業務阻害による影響はほとんど考えられず、しかも、その態様は単純な職場放棄であつて何らの混乱もなく暴力行為など一切伴つていない。

したがつて、本件争議行為は公労法一七条一項の禁止する争議行為に該当しない。

(四) 本件争議行為に国公法八二条の懲戒規定を適用することは違法である。

公労法一七条が争議行為を禁止することによつて保護しようとするのは、業務の停廃によつて重大な障害をうけるべき国民生活全体の利益である。これに対して国公法八二条が公務員の非違行為に対して懲戒処分をなすことによつて保護しようとするのは、使用者たる政府の指揮命令権の確保、職場秩序の維持である。争議行為は本来集団的労使関係における行動であつて使用者の指揮命令権を排除し、業務の正常な運営を阻害することに本質があり、これに対して、懲戒制度は個々の労働契約に基づく職務遂行に関する違反行為を処罰して使用者の指揮命令権を確保し、職場秩序を維持することを目的としたものであつて、争議行為参加者個々人の行為をその対象とすることはできない。公労法一七条違反の争議行為に対しては、懲戒の性質を持たない通常解雇たる同法一八条の不利益を課しうるのみであつて、若し、これに対して国公法上の懲戒処分を課しうるとすれば、公労法一八条をとくに規定する必要がない筈である。

(五) 本件懲戒処分は処分権の濫用ないし裁量権の逸脱である。

本件争議行為の態様やその実害がなかつたこと、原告らの多くが定員外の日給制職員であること、昭和四九年及び五〇年のスト処分の経過(いずれも単純参加者には何らの処分もなされていない。)などにてらし、原告らの本件争議行為に対して被告らが本件懲戒処分をしたのは、被告らが労使関係において優位に立つために恣意的に処分権を行使したものというべきであり、処分権の濫用ないしは被告らに許された処分についての裁量権の逸脱である。

第三証拠〈省略〉

理由

第一本件争議行為及び懲戒処分

一  請求原因事実は当事者間に争いがない。

二  被告らの主張第1項(原告らの争議行為及び懲戒処分)の事実は、原告佐藤ら一一名が被告ら主張の日時に青森地本分会代表者会議を開催したとの点、原告らの本件争議行為が公労法一七条一項及び国公法九九条その他の条項に違反するとの点及び被告らが国公法八二条各号に基づいて本件懲戒処分をしたとの点を除き、当事者間に争いがないところ、〈証拠省略〉及び弁論の全趣旨によれば、原告佐藤ら一一名は、昭和四六年三月八日ころ、同年四月一六日ころ及び同月二六日ころ、それぞれ青森地本分会代表者会議を開催して、同年四月二三日のむつ営林署分会外におけるストライキ、同月三〇日の中里営林署分会外におけるストライキ及び同年五月二〇日の脇野沢営林署分会外におけるストライキにつき、全林野中央本部の指令に従つてこれを実施することなどを企画したことが認められ、この認定に対する反証はない。

そして〈証拠省略〉及び弁論の全趣旨によると、被告らはそれぞれ、原告番号1ないし11番の原告佐藤ら一一名については前記職場放棄を企画実施させ、あるいは自ら指導した行為が公労法一七条一項により禁止された行為に該当し、かつ国公法九九条に違反したことを理由に、同法八二条一号、三号に基づいて本件各懲戒処分をし、その余の原告らについては前記のように上司の命令を無視して勤務時間中に無許可の職場集会に参加し、職務を放棄した行為が公労法一七条一項に該当し、かつ国公法九六条一項、九八条一項、九九条及び一〇一条一項にそれぞれ違反したことを理由に、同法八二条各号に基づいて本件各懲戒処分をしたものであることが認められる。

第二そこで以下原告らに対する本件各懲戒処分の効力について検討する。

一  本件争議行為の背景

1  国有林野事業の概要及びその業務の公共性

〈証拠省略〉を総合すると、以下の事実が認められる。

(一) 国有林野事業は、林野の林業的利用の高度化、林地保有及び林業経営の合理化、林業技術の向上、林産物の需給及び価格の安定、流通及び加工の合理化、近代的林業経営の従事者の養成及び確保、林業労働者の福祉向上などの諸事項を、国土保全その他森林のもつ公益的機能の確保等に考慮を払いつつ図つていくことが要請される国の林業政策に即するものであるが、とくに国有林野事業においては、その保有する林野をわが国の森林資源の根幹をなすものとして適切な管理経営を行ない、もつて国土保全、水源かん養、国民の保健休養、動植物その他自然保護などの森林のもつ公益的機能を最高度に発揮させながら、重要な林産物の持続的供給源としてその需給及び価格の安定に貢献させるとともに、奥地未開発林の開発等を促進して林業総生産の増大に寄与するほか、国有林野の所在地域における林業構造の改善に資するため積極的にその活用を図り、また、その所在地域における農業その他の産業の振興及び住民福祉向上のために供することが要請されている。

そこで国有林野事業は、右の事業目的達成のため、国有林野の樹種及び林相の改良、林野の開発及び林道その他の生産施設の拡充、林業技術の向上、国土保全上必要な施策の実施、国民の保健休養上必要な施策の実施、林産物の供給及び搬出施設等の事項に関し国有林野以外の森林の経営との調整並びに地元農山村の経済助長のため必要な施策の実施を推進することとし、具体的な事業として、国有林野の境界の測定、土壌調査、木材の収穫、製品生産、販売、増林、種苗生産、公有林野等の官行造林、林道建設、治山等の事業を実施し、合わせて共用林野、部分林の設定、国有林野の貸付及び使用許可、地元農林業構造改善のための国有林野の活用、民有保安林の買入れなどの地元施策並びに国有林野内の自然、動植物の保護及び自然休養林等のレクリエーシヨン施設設定による国民の保健休養の場の提供などを講じている。

林野庁所管の国有林は、昭和四四年四月一日現在で七八六万四、〇〇〇ヘクタール(うち官行造林地二五万四〇〇〇ヘクタール)で、国土面積の六九パーセントを占めるわが国森林面積の三一パーセントを占め、蓄積量は約八億七、六〇〇万立方メートルで、わが国森林資源の四六パーセントに達する。国有林野のうち、国土保全その他の要請上施業の制限を要する林地(第一種林地)は、昭和四六年四月一日現在で全体の約五〇パーセントであり、部分林、共用林野等地元住民の福祉のため特別の施業を要する林地(第三種林地)が約三パーセント、苗畑、林道等の林野以外の用に供される土地が約七パーセントで、残り約四〇パーセントが木材生産用の林地(第二種林地)となつている。また、国有林は、各地のせき梁山脈沿いの比較的奥地に分布し、未開発林が多く、老齢天然林が総面積の約七〇パーセントを占め、人工林は約二三パーセントと民有林に比して人工林率は著しく低い。これに対してわが国の民有林は、総計一、七二〇万五、〇〇〇ヘクタールで国土面積の約半分に近い面積を占めているが、国有林と違つて比較的便利な里山に所在しており、その大部分が一〇ヘクタール以下の零細小規模所有で平均蓄積量は一ヘクタール当り六〇立方メートル(国有林は一〇六立方メートル)と低い。

国有林野事業の一般的な性格は右のとおりであるが、その役割達成の方策として、その事業の管理経営に当つては、企業性の確保に考慮を払うことが要請され、そして国有林野事業特別会計法に基づき、これを企業的に運営し、経営の成果及び財政の状態を明確に分析把握して事業能率の増進、経営の合理化を図る趣旨で、一般会計と区別し、特別会計制度のもとで独立採算制として経理運営されている。その経理は、林業経営という生産経済を対象とするもので、企業会計として行なわれているが、一方国有林の特殊性からその事業勘定に林政協力的な非生産的事業をも含めており、そして林業生産の長期性と資源及び収穫保持の見地から年々の生産販売量には一定の制限が課せられ、また、国の予算の制約を受け、財政諸法規の適用下にある。したがつてここにいう企業性とは明らかに収益事業を重視したいわゆる私的な収益主義の意味における企業性とは自ずから異なるべきものであつて、その事業が効率的能率的に行なわれなければならないという意味での合理主義ないし能率主義を基調とするものであり、そしてかような事業の合理的能率的運営を図るためある程度の自主性が認められているという諸点に特色を有する。

ところで、国有林野に対する前述の種々の要請に応え、その機能を高度に発揮させるには、長期にわたる林木の生産期間を通して、収穫、造林、治山等の各事業を総合した計画を策定し、これに基づいて有機的かつ安定的に各事業を実施することが必要である。このため昭和三九年には林業基本法が制定され冒頭に認定した基本的姿勢が明確化されたが、現在行なわれている経営計画は、経営基本計画(森林資源基本計画及び林産物需給の長期的見通しの下で国有林野事業全体の経営の方向付けをするため一五か年を一期とし五年毎に林野庁長官が策定する。)、地域施業計画(経営基本計画に基づき、全国八〇の地域施業計画毎に一〇か年を一期として五年毎に各営林局長が立て、地種区分、施業団等の施業方法の基準、標準伐採量、標準更新面積等の事項を定める。)及び業務計画(林野庁長官が立てる全体業務計画、営林局長が立てる営林局業務計画及び営林署長が立てる営林署業務計画があり、それぞれ五年間について毎年策定される。)が挙げられる。毎年度の事業は、それぞれの業務計画の年度分等に基ずき、営林局長、営林署長がそれぞれ予定簿を作成して実施する。また、短期的な業務実施計画において特に留意さるべき点として造林事業における作業の季節的な適期の制限がある。すなわち、造林事業は、樹木という季節的な周期の繰返しにおいて成長する生命体を対象とするため、その成育の助長促進を図るうえで各作業を行なうにつき適切な時季を選ばなければ所期の効果を期待しえないという性質を有する。そこで、造林事業の具体的内容をなす、地拵え、植付け、下刈及び除伐等の各作業につき、各作業別、樹種別及び地域別に適期基準が定められている。これを青森県についてみると、本件争議行為が行なわれた四月下旬を適期とする作業としては、当年度の地拵え、植付け及び倒木起しなどがある。しかし、右の適期はいずれもほぼ二か月間の長さをもつて定められており、また、準適期もこれに接続する期間に設定されていて、時季的制限は一年生の農作物などと異つてかなり緩やかである。

(二) 以上が国有林野事業の概要であるが、以下、その具体的な事業の主要な内容と役割を公共性との関連において検討する。

まず、林産物の生産、販売等のいわゆる生産経済的事業による林産物需給及び価格安定の機能についてみるに、わが国における高度経済成長に伴い、木材需要も急激に増大したため、国有林野事業においてもこれに対応して、昭和三三年以来の生産力増強計画を規模拡大の方向で再編成し、また、昭和三六年以降五〇年間にわたる木材増産計画を策定し、これに基づいて、低生産の天然林を成長量の多い人工林に転換するため天然林の伐採、伐採跡地に対する地拵え、植付け等の更新事業、下刈、枝打ち等の保育事業、病虫害防除等の保護事業等の収穫及び造林事業を実施し、また、高密路網をなす林道を建設して奥地未開発林を開発し、生産量の増大を図るとともに林道利用による収穫その他の作業の機械化並びに作業の標準化、工程管理の確立及び全幹集材作業等の導入による作業の合理化によつて生産性の向上を図り、その結果昭和三九年を頂点として年平均二、二七七万立法メートルの収穫量を得るに至つた。また、販売業務については、立木のままで売る立木販売で約四八〇億円、素材、製材、薪等の製品にして売る製品販売で約八九五億円(いずれも昭和四五年度実積)にのぼり、かつその販売方法等と相まつて、木材の需給及び価格安定に少なからず寄与してきた。

しかし他方、昭和三六年以降木材需要の増大につれて外材の輸入が増加し、昭和四五年にはわが国の用材供給量の五五パーセントに達し、また工業技術の進歩により木材製品の代替材が広く用いられるようになつたため、国有林材の供給量はわが国木材供給量の二割程度に低下した。さらに、近時国土保全、自然景観の保護等森林の公益的機能が重視されるようになり、この見地から保安林、自然公園の特別地域の大幅な指定が行なわれ、これらの林地が伐採率、伐区面積、年伐面積、伐期齢に関する施業制限を広範囲に受けることとなつた。これらの事情により、今後の国有林の収穫量及び人工造林目標面積は減少の方向で検討され、国有林野事業の木材需要調整への寄与度は後退の傾向を余儀なくされているとともに、それに伴いかえつて国有林野事業の採算制の下での企業性が強調され、能率向上を図るべきことが指向されている。そしてかような事業の合理的運営の必要から、昭和四五年度における木材供給量のうち約六〇パーセントは、立木のままで販売する立木販売方式をとり、伐採、運材等を経て製品市場へ出される作業はすべて民間業者によつて行なわれ、また国有林野事業が行なう製品生産のうち約二〇パーセントが民間業者の請負によつて行なわれているほか、林道事業の主要部分である工事施行等さえもその大部分が民間業者の請負によつており、国家公務員たる定員外作業員の業務は管理及び小規模な補修工事等に限られている。

次に、国土保全等のいわゆる公益的機能に関する事業についてみるに、国有林野の多くは重要河川の上流地域をなすせき梁山脈地帯に分布し、国土保全上重要な位置にあるため、全面積の四五パーセントが保安林に指定されており、これはわが国の全保安林面積の五二パーセントにあたる。国有林野事業は、発足以来数次にわたる長期計画の下で、崩壊地荒廃地の防止復旧、水源林、防災林等の造成などの治山事業を実施してきたほか、民有保安林を買入れその整備管理を行なつている。また、国有林野はわが国の自然公園面積の約四〇パーセントを占め、そのうち特別地域及び特別保護地区は約七〇パーセントにのぼり、その他風致保安林や鳥獣保護区に指定された森林も多く、国有林野事業は、木材生産を目的とする林業経営とこれらの保護地区内の森林経営との調整を図りつつ、自然環境の維持、国民の保健休養を図つているほか、国有林野内に自然休養林や各種のレクリエーシヨン施設を整備して国民一般の利用に供している。

そのほか、国有林野事業は、奥地民有林の開発にも資する関連林道の開設、材木の品種改良などの事業を実施し、木材需要の増大に対処するための民有林生産力増強に対する寄与協力を行ない、地元住民の福祉向上のため、共用林野の利用や部分林の設定などの地元施設制度、国有林野の貸付使用及び使用許可、農林業構造改善のため、農林業用地造成の用に供する国有林野の売渡し、貸付及び売払いや部分林の設定などを推進している。

(三) 以上に認定したところによれば、森林の有する公益的機能と経済的機能との調和を図りながら発展させ、わが国林業の振興を図るという国の林業政策の唯一具体的な実施主体としての国有林野事業に課せられた公共的役割の重要性を否定することはできず、それは基本的には、私的経営では達成し難く、いうならば私的収益主義と矛盾するものということができよう。しかし国有林野事業目的の一つの柱である生産経済的側面における木材供給の調節による需給及び価格の安定という点についてみれば、前認定のように、近年の外材輸入の増大等による市場占有率の低下により、客観的には右の安定機能を効果的に発揮しうるに足りる指導的な立場を保持することがきわめて困難となつているかあるいはすでにこれを喪失した状態に至つており、また、かような客観的情勢に加えて近時の自然環境保護を要請する高まりの中で、国有林野事業自らが収穫量や人工造林の面積を減少の方向へ向けて事業実施目標を修正しつつあり、しかもまたこのような情勢と相まち、その事業の採算性の故をもつて、企業性強化の名の下に、ややもすれば高値販売に赴き易く、このため木材の需給調整、価格安定の役割を果たそうとする姿勢を後退させているとともに、右事業における作業にかなりの民間業者が投入されている。したがつて、この面における国有林野事業の公共的役割の重要性の度合いは必ずしも高いとはいえなくなつているし、またここでいう公共性も僅か一日にも満たない右事業の停廃が直ちに国民全体の利益に障害を及ぼすという性質のものではない。

また林地の高度利用、奥地未開林の開発、地元住民の福祉等に寄与するための施策の一つとして林道の開設、改良、管理等の事業の公共性が重視されるが、しかしかような開発は後に述べるように森林のもつ公益的機能と多分に相容れない面があり、またこれら作業にもかなりの民間業者が請負の形で投入されており、そしてそのもつ公共性の内容も僅かの時日の作業の停廃によつて障害を及ぼすという性質のものでない。

これに対して国土保全、水源かん養、自然環境の保護等の公益的事業は、広域的、統一的かつ長期的な総合施策を必要とするものであつて、小規模零細な経営が大部分を占めるわが国の民間林業においてよくなしうるところではないし、私的経営にこれを期待することはできない。かくて国有林野事業がこの面において期待され、かつ、現に果している役割は重要である。したがつて若しその業務の停廃によつて右機能の維持発揮が阻害されれば、国民生活の基盤をなす国土の荒廃、自然の破壊を招き、国民全体の共同生活に対し回復し難い重大な障碍を与えるおそれがある。かような観点からみれば、森林資源の維持培養(これは同時に林業の生産基盤となる面をもつ)を図ることがとりわけ重要であるが、このための施策として重視されるべきものは育成造林の事業である。しかし、樹木や森林はその生育に長時間を要し、その育成造林事業もまた長期にわたる継続的施業という形態をとらざるをえないものである。もとより造林、種苗等各個の具体的な作業については毎年の適期というものがあつて、季節的制約を受けるものであり、そしてかような個々の作業の積み重ねと相互の有機的関連の上に長期的施業計画が成立つているとはいえ、季節的制約からくる作業適期の点については相当緩やかであり、また育成の点でも自然に委ねておけばすむ面を多分にもつており、僅か一日にも満たない数時間の作業停滞によつては、いささかの障害をも及ぼすものではないのである。

加えて、森林の公益的機能はその存在が保障されてさえいれば自ずから発揮されるという特質があり、これに必要な人為としては森林の保護管理等の作業がありうるのみで、いうならば森林の公益性とは自然力の維持増大を本体とするものであり、未だ林業がこの自然力の維持を自由に制御しうる技術をもつに至つていない以上かえつて、伐採、造林、林道建設等の生産事業の実施は森林の公益的機能の維持の要請とは相対立するという側面があることは否定できず、その故にこそ国有林野の生産経済的事業は右の意味における公益上の要請との調整を図りつつ確保されなければならないとされているのである。

(四) 原告番号12ないし133番の原告らを含む作業員の職務は主として造林、種苗、収穫、生産、土木工事等の生産関連事業の部門に集中しており、公益的事業の部門にはほとんどあてられていない。そして生産部門の中でも林産物市場に直結する製品生産事業については、民間業者の請負による部分が大きいため、作業員の担当職務の比重はそれほど高くなく、むしろ種苗、地拵、造林等の基礎的な作業部門における職務がほとんどであるが、その職務の停廃が及ぼす影響は、特に長時間にわたらないかぎり顕著にあらわれ難いものであることは前記のとおりである。

以上のように認められ、右認定をくつがえすに足りる確かな証拠はない。

2  作業員の処遇及び本件争議行為に至る経過

〈証拠省略〉によれば以下の事実が認められる。

(一) 国有林野事業は、昭和二二年の国有林野事業特別会計制度の創設により発足し、当時現在の作業員にあたる労務者は昭和二三年の国公法改正によつて同法の適用を受ける一般職の国家公務員となつたが、その処遇に関する法的規整は不明確で、実態としても不統一であつた。そこで林野庁は昭和二五年に「営林局署労務者取扱規程」、翌二六年に「営林局署労務者処遇規程」を制定し、作業員の労働条件全般についての全国統一的な基準を設定した。その後昭和二八年一月国有林事業に対して公労法が適用され、この結果同法により職員に労働組合結成など団結権と、事業体の管理、運営に関する事項を除く職員の労働条件等についての団体交渉権、労働協約締結権が認められた。

そこでその後林野庁と全林野との間の団体交渉により、作業員の雇用制度、賃金、休日等の労働条件に関する多くの協約や覚書が締結され、また、林野庁は労働基準法に基づき就業規則を制定して、処遇の明確化及び内容の向上を図つてきた。

作業員の雇用制度は、右のような経過の中で、前記営林局署労務者処遇規程を基本とするが、その後二九年三月一七日「定員外職員の雇用区分、雇用基準及び解雇の場合に関する覚書」が労使の協議によつて締結されてその雇用制度が確立し、次いで昭和四四年四月一四日締結の「定員外職員の雇用区分、雇用基準および試用期間に関する覚書」によつて改善された。これによれば、常勤作業員等を除く作業員の雇用区分は、常用作業員、定期作業員及び臨時作業員に区分され、いずれも行政機関の職員の定員に関する法律(定員法)及び行政機関職員定員令に定められたいわゆる定員内職員以外の定員外職員であり、制度上は非常勤職員として臨時雇用の取扱いを受ける。かような雇用形態は、国有林野事業のうちとくに造林、種苗等の事業が植物生理の上から季節的要因に左右され、また、東北地方等の積雪地帯では製品生産事業も年間を通じて継続することが困難であること、作業員のほとんどが地元雇用であつて、就労地域が限定されることなどの理由に基づく。しかし労使間の申し合せにより運営上作業員の地位の安定を図るため、常用作業員については雇用期間更新によつて事実上期間の定めのないものと同様に取扱い、定期作業員についても特段の事業上の事情変更がないかぎり優先的に反覆雇用するという取扱いがされ、このため前記の昭和四四年四月覚書により、常用作業員の雇用基準は一二か月をこえて継続して勤務する必要があり、かつ、その見込があることとされ、定期作業員は毎年同一時季に六か月以上継続して勤務することを例とする必要があり、かつ、その見込があることとされている。右の雇用実態及び国有林野の所在地域には他に雇用の機会を求めるべき産業が少ないことから、常用及び定期作業員は固定化し、常用作業員の勤務年数が平均七・三年(昭和四五年一〇月現在)であるなど長年にわたり反覆継続して国有林野事業に雇用され、主としてその賃金収入によつて生計を維持しているケースが多く、定期作業員は雇用中断中は農漁業に従事することが多いが、国有林野事業に従事することによつて得られる賃金及び中断中の退職手当や失業保険金などの給付に対する依存度が高い。

次に、作業員の労働条件についてみると、賃金については一般職の職員の給与に関する法律の適用は受けず、労使間の自主的な団体交渉によつて決定されるのが原則であるが、一定の場合に国会の承認を要するなど自主決定権は法令上ある程度の制限を受ける。賃金形態は、昭和四四年七月締結の「国有林野事業の作業員の賃金に関する労働協約」により原則として定額日給制及び単純出来高給制が併用されており、基準外賃金として期未手当、扶養家族手当等の諸手当の支給も右協約に基づいてなされるほか、定期作業員の雇用中断期間中は国家公務員退職手当法または失業保険法に基づく給付がある。休日、休暇については、週一日の休日及び月二日の作業休日のほか、有給休暇、特別休暇等の制度がある。

なお、労働時間に関し、単純な比較は相当ではないが客観的には賃金の平均支給額、諸手当の額、勤務時間、有給休暇の日数、共済組合への加入などの諸点において定員外の非常勤職員たる作業員と定員内職員及び常勤作業員との間には格差が見られ、その格差の多くは法制上の地位ないし雇用条件の差異に由来するものであるといいうる。

(二) ところで、全林野は結成以来作業員の雇用安定及び定員内職員との賃金格差の是正を主要な要求課題としてきたが、林野庁も昭和四一年の三月と六月の二度にわたり、雇用の安定を図るため作業員の臨時雇用制度を抜本的に改めるという基本姿勢を打出し、さしあたり、生産事業を通年化することによつて雇用を通年化し、また、事業期間を拡大し、あるいは各事業を組合わせることによつて雇用期間を延長するなどの措置をとるとの考えを表明し、これを全林野との間で確認した(いわゆる二確認)。これに基づいて、昭和四五年までの間に全国で約一万名、青森営林局管内だけで二九三名が常用化され、また、定期作業員の平均雇用期間も昭和四一年当時七・五か月であつたものが昭和四五年末には八・一か月に拡大された。

前記二確認以後、林野庁と全林野との間で臨時雇用制度の抜本的改善についての交渉が重ねられたが、昭和四五年七月に至り、林野庁は、従来の雇用区分を改めて通年及び有期の基幹作業員と臨時作業員の二種とし、基幹作業員を資格要件及び経験年数、技能、年齢等について選考基準に基づいて現行の常用及び定期作業員中から任用し、これを国公法上の常勤職員として取扱うなどの改善案を提示した(いわゆる七月提案)。これに対して、全林野は常用及び定期作業員の中から基幹作業員を選別することは新たな差別であるとして、同年一二月一一日、全国六七の営林署を拠点として半日ストライキを実施した。林野庁は、右七月提案に基づき、翌四六年度からこれを実施することを表明し、その間に関係各省庁との調整を図ろうとしたが、同年四月に至つても基幹作業員の常勤職員化は国家公務員の体系にもかかわる困難な問題であつて慎重な検討を要する旨の政府統一見解が表明されたのみで、事態の進展がなかつたため、全林野は、同年四月二三日、全国七二の営林署において拠点ストライキを実施し、むつ営林署分会においても前述の本件ストライキを行なつた。

また、全林野は、昭和四六年度の春闘にさいし、大幅賃上げ及び格差是正を目標として掲げ、いわゆる春闘共闘及び公労協共闘の一員として、林野庁に対して、月給制の定員内職員については月額一万五、三〇〇円、日給制の定員外職員については日額一、三〇〇円の賃金引上げを要求し、これに対する林野庁の回答を不満として同年四月三〇日、全国二〇か所の営林署において拠点ストライキを実施し、中里営林署分会においても前述のとおり本件ストライキを行なつた。その後、自主交渉が打切られて公労委における調停に移行し、五月二〇日、調停委員長から解決案が提示され、全林野はこれを不満としつつも予定していた同日のストライキを午前一〇時で中止することを決め、同日のストライキは全国二一の営林署で開始されたが途中で中止された。脇野沢営林署分会においても前述のとおり本件ストライキが行なわれた。

(三) 右認定の事実によれば、まず、臨時雇用である作業員の地位は、運営により実質的には継続雇用として取扱われ(常用作業員の場合)、または、期間満了によつていつたん退職しても翌年の再雇用が優先雇用に関する確認に基づいて原則として保障されている(定期作業員の場合)けれども、とくに定期作業員は職務就労すなわち賃金収入の中断期間が毎年反覆し、その間は退職手当ないし失業保険の給付を受けるのみであり、国家公務員たる身分の保障が制度上確保されていないという不安定な地位におかれていること、かような雇用形態は、主として林野事業の季節的条件を理由として採用されてきたが、近年は常用化が推進され、また、現行の雇用区分を廃し、基幹及び臨時作業員に分別して基幹作業員を常勤とする旨の構想も検討されているなど、必ずしも林野事業労働者の雇用形態として変更の余地のない制約であるとはいえないこと、国有林野事業は比較的辺ぴな山脈地域での施業が多く、当該地域住民に労働の機会を与えるという住民福祉的な機能も営んでおり、作業員の多くは零細農家あるいは漁業従事者であり、国有林野事業に従事して得る賃金収入がその生活の重要な基盤をなしていること、これらの事実を勘案すれば、直ちに臨時雇用の作業員を常勤職員化して雇用の安定を図ることは国家公務員制度の体系その他の諸事情からして困難であるとしても、全林野の掲げる雇用安定の要求は正当な指摘を含んでいるといいうる。また、賃金引上げ及び格差是正の要求については、出来高給及び日給制という賃金支払形態は作業員の雇用形態との関連で採用されているもので、雇用の不安定と表裏をなし、作業員の労働条件の安定の見地からすれば適当ということはできず、雇用安定の要求との関連においてみれば基本的にはこれもまた不当な要求とはいえない。

三  本件懲戒処分の適否

1  原告らの本件争議行為は公労法一七条一項に触れるものである。

ところで右条項は、公共企業体等の職員の争議行為を禁止することによつて、国民生活一般の利益の保護を図ろうとするものであるが、およそ国の事業体の場合、右のような国民生活一般の利益の保護と、使用者が個々の職員に対する指揮監督等個別的な労働関係を通して職場秩序を維持し業務の正常な運営を確保することとは全く相互に無関係ではなく、不可分の関連性をもつものであるから、前記条項により禁止された争議行為に加功することにより若しくはそれに際して、上司の指揮命令に違反する等法令上及び職務上の義務に違反して職場秩序をみだした職員に対しては、使用者は国公法八二条に基づく懲戒権を取得するものというべきである。

しかし右のように使用者が懲戒権を取得するといつても、それは一般的形式的な立場からする法の適用の結果に過ぎず、当該の具体的な懲戒処分が正当な権利の行使として適法であるかどうかは、更に進んで当該具体的個別的な実質関係を考慮して決定しなければならない。

そして、右の場合、懲戒事由に該当する行為をした職員に対し、懲戒権者が懲戒権を発動行使すべきかどうか、またどの種類の懲戒処分を課すべきかは、その全くの自由裁量に委ねられているわけではなく、秩序違反の態様、程度、その目的、動機のほか、当該職員の地位、懲戒処分によつて受ける不利益の程度等の諸事情を綜合考慮したうえ、職場秩序を維持し業務の正常な運営を確保するため客観的にみて必要最小限の範囲に止められるべきものであるが、とくに争議行為に起因する場合には、次に述べるように、勤労者の労働基本権を保障した憲法の根本精神と、それにもかかわらず公共企業体等職員の争議行為を禁止した公労法一七条の規定の趣旨の検討を通して、果して当該懲戒処分が合理的妥当性をもつものであるかどうかを決しなければならない。

すなわち、憲法二八条は勤労者の団結権、団体交渉権及び争議権等の労働基本権を保障しているが、そのゆえんはこれら権利が相互に相まつて勤労者の生存権保障につながるものであり、かつこれを保障するための必要不可欠な手段であるからにほかならない。そして国有林野事業の職員といえども憲法上の勤労者にあたるから、原則としてその保障を受けるべきものである。

しかしそうであるからといつて、右労働基本権は何らの制約をも許さない絶対的なものではなく、若しその行使が国民生活全体の利益と衝突するときはその利益保護の見地からの制約を受ける場合があることを認めざるを得ない。公労法一七条が争議行為を禁止したのも、公共企業体等職員の職務の性質が一般的に一般労働者より公共性が高く、したがつて争議行為による業務の停廃が国民生活全体の利益を害し、国民生活一般に無視し得ない影響を及ぼすおそれがあるからにほかならない。

もちろん五現業、三公社のそれぞれ個々の業務内容を観察すれば、公共的業務としての重要性については差等のあることは否めない。しかし法は一般的抽象的規範の定めであるという性格からして、公労法の前記法条も適用すべき対象について右のような具体的個別的な実質関係を捨象し、その業務がその性質上一般的に公共性を有するという一般的形式的観点に立つて規律せざるを得ないものであるから、それぞれの業務のもつ公共性の個別的実質関係に応じて、或る職員の或る争議行為を禁止し、他の職員の他の争議行為を許容するというように解釈することはできないとしても、しかしそれ故にこそ形式的一般的な法の立場からは是認される争議行為の禁止が個別的具体的な実質関係においては正当視されない場合もあり得るのであるから、禁止された争議行為を理由になされた個別的具体的な懲戒処分の適否を判断するについては、正に、その業務の性質、内容、争議行為の内容、程度、目的等を実質的に検討し、当該争議行為に起因する業務の停廃によつて、国民全体の生活に無視し得ない障害を与えまたそのおそれがあつたかどうかを見究め、また若し何らかの障害を与えたとしても、労働基本権を尊重確保する必要との比較衡量により、慎重に検討し、もつて当該懲戒処分が合理的妥当性をもつものであるかどうかを決定しなければならない。

そこで次に、以上の観点に立つて本件懲戒処分の適否を検討する。

2  国有林野事業に従事する作業員の職務の公共性については、前認定のとおりであつて、その停廃の内容、程度如何によつては同事業の果すべき公共的機能が阻害され、国民生活に重大な支障が生じさせるおそれのある場合があることは否めない。

しかし、本件争議行為はいずれも僅かに四時間程度の職場放棄で何ら暴力的行為を伴なわない単なる労務不提供であるにすぎず、争議行為に参加した者以外の営林署の業務全体に対する積極的な阻害行為を伴なつていないことからして、これによる作業計画の遅延は、たとえ生じたとしても取るに足りない程度であると認められ、先に認定した国有林野事業の公共的機能の特質及び現状に照らし、その事業目的の達成上何らかの障害となり、国民生活に対し支障を及ぼし、またはそのおそれがあつたと認めるには足りない。

また、本件争議行為は、作業員の雇用制度改善、賃金引上げ及び格差是正という要求に基づき、使用者たる林野庁ないし政府に対してその実現ないし実現への努力を求めて実施されたものであり、右要求の内容自体は前認定のとおりそれぞれ理由があること、そのうち雇用制度改善については林野庁ないし政府としてもその必要性を基本的には認めており、改善の方向で検討中であつたことから、争議行為が禁止されていることを度外視すれば、それ自体としては何ら不当な要求を掲げあるいは使用者たる林野庁ないし政府に対して不可能な事項を要求したものではなく、争議行為としての一般的な正当性には欠けるところがなかつたということができる。

3  以上に検討したところを総合すると、原告佐藤ら一一名を除くその余の原告ら作業員が行なつた本件争議行為は、形式的には争議行為禁止法規に触れるとはいえ、当該法規が争議行為を禁止することによつて保護しようとする国民全体の利益に対しいささかなりとも脅威を与えたと認めることはできないうえ、その目的が作業員の地位の安定及び労働条件改善という労働者としてはきわめて当然かつ切実な要求であつたものであり、国家公務員を含めて労働者に労働基本権を保障した憲法二八条の趣旨及び公労法一七条一項が争議行為を制限禁止した理由ないし意義に照らし、本件争議行為に対して被告むつ署長、同中里署長及び同脇野沢署長がした各懲戒処分は、成程そのうちには、戒告という最も軽い処分を受けたに過ぎない者もいるが、しかしその点を考慮に入れても、なおそのような懲戒処分を発動行使したこと自体が不必要に苛酷に過ぎ、懲戒処分権の行使について同被告らに委ねられた合理的な裁量の範囲を著しく逸脱してなされた違法のものと評価せざるをえない。

また、原告佐藤ら一一名の職員の行為は、本件争議行為の計画及び指導であり、公労法一七条一項で禁止された行為に該当するが、本件争議行為の目的、態様及び影響について前に認定した事実及びこれに対する評価にかんがみれば、本件争議行為を実行したその余の原告の場合と同様、これに対して懲戒処分を課すること自体公労法一七条一項による禁止の趣旨を逸脱したものであり、被告局長に委ねられた懲戒処分権行使についての合理的な裁量の範囲を外れたものといわざるをえない。

第三結論

よつて、その余の事項について判断するまでもなく、本件各懲戒処分はいずれも違法であつて取消を免れず、原告らの請求は正当であるからこれを認容し、訴訟費用の負担につき、民訴法八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 田辺康次 吉武克洋 池谷泉)

別紙当事者目録、別紙(二)ないし(四)〈省略〉

別表(一)

氏名

所属

組合役職

処分内容

佐藤良吉

青森営林局

副委員長(専従)

停職三月

松谷泰孝

青森営林署

書記長(右同)

右同

岡本富夫

大間営林署

財政局長(右同)

停職一月

吾妻実

青森営林局

執行委員(右同)

右同

佐藤敏雄

黒石営林署

右同(右同)

停職一〇日

岩崎公也

遠野営林署

右同(右同)

停職一月

山岸芳美

宮古営林署

右同(右同)

右同

小笠原良男

白石営林署

右同(右同)

右同

木村養七

大槌営林署

右同(右同)

右同

佐々木昭男

青森運輸営林署

右同(非専従)

停職一〇日

仲谷正

青森営林局

右同(非専従)

右同

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